株式会社 アドバンス経営   コンサルタント、生産性、製造業  
   




  東京事務所
電話  03-3837-7701

  大阪事務所
電話  06-6307-0866


     
 
←前ページ  次ページ→

  「日・米・独の企業経営比較による
         日本の製造業の経営力強化ポイント」
 

       第5章 今後の日本の製造業の経営力強化ポイント
代表取締役社長 中田 耕治


4.新たな経営理念の創造と浸透

経営理念の創造と浸透に関しては、残したいベスト10の「C信頼関係重視・自主性尊重の風土」が、また捨てるべきワースト10の「C業界共通利害の保護習慣」などが該当している。そしてこれら2項目の背景には、企業統治(コーポレート・ガバナンス)の問題が潜んでいる。この企業統治には、取締役会の監視機能強化しいかにして意思決定と業務執行の迅速性、確実性と信頼性を確保するかということと、会社は誰のものか、あるいは誰のために存在するかの2つの課題があるが、後者が経営理念に直結する内容である。
会社は誰のものか暗示する日本企業についての調査があるが、経営が悪化した場合に最も実施しにくい事項として中小企業、大企業とも「従業員の削減」が最も多く、「株主への配当の減配」が最も少ない。このことから日本では、企業規模にかかわらず株主や債権者より従業員が重視される傾向があることを示している。この背景には日本の「家制度」があり、企業においては「家」が「会社」になっただけであり、これが終身雇用制度や年功序列制度として具現化したものと思われる。残したいベスト10と捨てるべきワースト10の両方に「終身雇用」が入っていた矛盾は、この「家制度」に対する長所と欠点を考えてのことと思われる。ドイツも長期雇用という観点では日本と同じような考え方であるが、アメリカは雇用よりも利益確保を第1に選択する。これはアメリカの株主に一般株主が多いことが大きく起因している。もし日本の株主構造がアメリカのようになれば、当然社員の雇用よりも利益重視の姿勢が強くなり、終身雇用の言葉はすぐになくなるだろう。もちろん今でもその兆候は出てきているものの、まだ全体へ波及しているとはいいがたい。
 会社は誰のものかということに関しては、やはり「社員のもの」という理念が今後とも必要だと考えている。会社を自分のものと思えるから一生懸命に仕事をするのは、どの国であっても、いつの時代でも変わらないことである。ただし、資本の出資関係でそれを変えねばならないという現状があることは確かである。この点では日本やドイツの銀行による株式の保有はメリットが大きい。しかし、アメリカでは銀行が企業を支配することに拒否反応があり、銀行が会社の株式を所有することは禁じられていて(子会社経由で5%はできるが)、また銀行の全国展開は1980年代になってから認められたものである。
多くの一般株主は短期的な利益志向であり、株の配当と株高だけを考えていること、つまりそれに反する状況が見られたらすぐに売却してしまうことは当然の行為である。そのような状況では、経営者は「株主」の目ばかりに注目して経営をしなければならなくなるので、そうならないように、株主に喜んでもらえる、期待を持ち続けてもらえる経営理念と目標を設定することが必要である。もちろんお題目だけにならないように全社員への徹底的な浸透と行動が伴わなければならない。そうして経営目標の実現確率が高くなればなるほど、株主は比較的長期的な視点で企業を見るようになると想像されるからである。経営理念を創造する上で、経営者の経営に対する視点を遠くすること、すなわち大きな歴史の流れ、変化のサイクル、周期を見据えることが必要である。それが、20年先の経営の成功を約束する。そのためには、人間の欲望(顧客のニーズ)が見えること、先を読めるゆとりを持つこと、経営資源の蓄積があること、つまり経営者の大きな歴史観と大きな人間観が大切である。
←前ページ  次ページ→