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  「日・米・独の企業経営比較による
         日本の製造業の経営力強化ポイント」
 

       第5章 今後の日本の製造業の経営力強化ポイント
代表取締役社長 中田 耕治


3.社員の高価値化(2)

一方日本企業では社内教育が主流であり、定期採用した大量の大卒者をOJTにより数年かけて育て、さらに10〜15年かけてエリートを選別してきた。そのOJTと時間をかけたエリート選別は、日本企業の競争力の源泉の一つとして評価されてきたが、もはや日本の企業にはこのような悠長な人材育成をする余裕はなくなった。その解決策としていかに即戦力となる若者を採用するかと言うことになるが、現在の採用方法、特に面接には問題がある。すなわち、面接者が先輩、人事の採用係、係長、課長、部長、担当役員と進むうちに面接回数はかさみ、企業の平均的評価基準にあった学生だだけが残り個性のある学生は確実にふるいにかけられてしまうのである。仕事の能力が判断できないために、面接回数と会う人間の多い学生ほど仕事上の個性は見逃され、人間的にモノトーンの学生だけが残ってしまっていた。
もうひとつには、エリートはほっといても能力を高めるが、残されたものはどうなるのだろうかという問題がある。会社はエリートだけでは成り立たない。そこでブルーカラーを含めた普通の人のやる気をいかに高めるかが問題になる。日本ではブルーカラーのきつくて汚く危険な労働条件は、豊かな時代に育った若者たちからそっぽを向かれている。彼らにしてみれば、戦中戦後の窮乏に苦しんだ両親や祖父母の犠牲的な精神などあずかり知らぬところなのだ。彼らが求めるのは、さらに快適でバランスのとれた楽しみのある生活である。日本人の若い労働者を引き付けるためには、会社のイメージを高めて、魅力ある職場にするかということが課題なのである。
日本の賃金制度の特徴は、賃金が30歳半ばまで家庭の支出に応じて比較的緩やかに上昇し、そこから急上昇して50歳代初めにピークを迎えるという、いわば生活給的な要素持っていたことである。賃金が年齢とともに上昇し、50歳代に上昇のカーブが鈍るとしても定年まで落ちることはない、すなわち下方硬直的な年功性になっていたことである。また能力によって賃金の差が少ないことは、賃金が能力と直接リンクしていない年功的な体系になっていたことの現われである。そして定年退職時に多額の退職金をもらうが、これは退職金には30歳代、40歳代の働き盛りにもらい損なった会社への貸しを返してもらうという意味があったからである。
このように日本では終身雇用制度は一般化し、一方ドイツでは、社会的市場経済に基づく労働規制強化の産物として長期雇用が定着化した。したがって企業にとっては、日本、ドイツともに長期雇用した労働力の効率的な活用が重要なポイントだったため、労働力の企業内教育・研修が重視され、労働生産性を長期的に引き上げることが可能になったのである。しかし、同じ長期雇用を基盤としながら、日本とドイツには明確な相違点がある。それは日本では未熟練労働者である新卒者の定期採用が慣行となっているのに対し、ドイツでは未熟練労働者の採用を抑制してきた点である。この差は、日本とドイツ両経済の活力の差の一因になっていると考えられる。
 結論として言えることは、今までの日本的経営の中の良い部分、社員に経営参加させて能力を発揮させることは今後ともその追求手段を変えながらも必要なことである。社員の能力を高めること、すなわち「高価値化」は、会社の目的追及に大きく影響を与えるところである。
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